ボブ・ディランは歌手/パフォーマーとしてのカリスマとは別に、ソングライターの技術を職人として半世紀にわたって駆使してきました。1960年代から本人が発表していなかった曲も含めて彼の作品はあらゆるジャンルのアーティストに取り上げられています。しかし、そんな中でも、去年ベン・シドランが出した『Dylan Different』はそのタイトルの通り、これまでにないディランを聴かせるアルバムでした。よく知っていたはずのディランの曲はテンポやコード進行が微妙に変わり、ヴォーカルが入るまでどの曲か分かりません。そしてベンが得意とする、ジャズとブルーズの中間にまたがるスタイルで、ぼそぼそとしゃべるような歌い方では、何年も聴き続けてきたディランのオリジナルではなぜか意識しなかった歌詞が耳に飛びついてきたり、その意味が少し違って聞こえたり、繰り返し聴いてもとても新鮮に響きます。ディラン自身のコンサートを最近久々に観ただけに、この極めてクールな音楽をライヴで聴くのは実に楽しみです。
(ピーター・バラカン/ブロードキャスター)
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『Dylan Different』 (Nardis)