私がJordan Rakeiを初めて耳にしたのは、Jose Jamesのバンドでドラマーを務めたRichard Spavenの動画であった。抜群のリズム感を持ち、クールに歌い上げる姿にすぐに魅了された。Richard Spavenとともに現在のロンドンのネオソウル・ジャズシーンの最先端を行っていることはよく聞くが、それを肌で体験できた素晴らしいライブであった。
彼のライブに行かれた方であればすぐ気づいたかもしれないが、MCを除けば極端に曲間がない。ほとんどすべての曲を繋げていくようにライブを展開していたのである。私の行った際には、同じビートで曲どうしを繋いでいくものがあり、やっていることがまさにDJのそれであった。以前に行ったRobert Glasper Experimentのライブでも今回と同様に曲をすべて繋げたり、ソロの途中でSlum Villageの曲を混ぜ込むと行った手法が取られており、生演奏でDJをしているような印象を受けた。
Robert Glasperのバンドでドラマーを務めたChris DaveはJ Dillaが意図的に作り出した、不正確でよれたビートを生のドラムで叩いて見せたのだが、今回のライブでもドラマーのJim Macreaの叩いていた人力ドラムンベースは特に驚異的であった。変幻自在にビートを操り曲のグルーヴを先導していた姿は、バンドの中でも群を抜いていたように感じている。
Robert Glasperによるグラミー賞受賞作である"Black Radio"(2012)くらいの時代であれば、まだ「ジャズとヒップホップの融合」などと形容して取り上げることはできるはずだが、Jordan Rakeiという彼より一回り下の世代になってくると、もはやRobert Glasperたちの世代のジャズミュージシャンたちがやっていたことが当たり前のようにある世代であり、そのように形容されていた音楽を当たり前のように吸収しているはずだ。上述の通り、私は「人力ドラムンベース」とわざわざ取り上げたが、彼らにとってはこのようなビートを作り出すことなどは日常的に行われているのではないかとも感じた。確実に現代ジャズシーンの世代が交代していることをも感じさせるライブであったことは間違いない。
Jordan RakeiはTom Mischの作品にもフィーチャリングされており、両者が今後のシーンの先頭に立つことは間違いないはずだ。しかし、ここ日本では星野源が取り上げたTom Mischの方が、圧倒的な人気を誇っているように感じる。実際、彼はサマーソニックという大舞台に立っていたことからもその人気ぶりがうかがえる。両者とも素晴らしい音楽をやっているだけに、ここ日本ではそのプロモーションの違いで人気に少なからず隔たりが出てしまっていることは個人的に残念でならない。Jordan Rakeiは日本においてももっと大衆的な評価を得られるべき素晴らしいミュージシャンであると思う。
Jordan Rakeiの今後の活動に大きく期待できることはもちろん、彼らの世代のミュージシャンがどのような音楽トレンドを作り出すのか、注目して今後の動向を見ていきたいと思う。
男性 東京都 ノリ
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