FEATURES | VERONICA SWIFT
ジャンルの垣根を越えて活動するジャズ・ヴォーカル界の新世代歌姫、ヴェロニカ・スウィフトが4月27日(土)から待望の来日公演を行う。最新作『ヴェロニカ・スウィフト』は、ジャニス・ジョプリン、デヴィッド・ボウイ、デューク・エリントン等のレジェンドに表敬し、ジャズ、クラシック、ロック、ソウル、ファンクをミックスしたヴェロニカ流のニューサウンドが詰まった作品だ。そのアルバムを携え来日するヴェロニカの魅力について、写真家/音楽ジャーナリストの常盤武彦氏に解説してもらった。

正統派ジャズ・ヴォーカルのプリンセスの仮面を脱ぎ捨て
自由奔放に羽ばたくヴェロニカ・スウィフト

text by 常盤武彦 2024.3.15
 ヴェロニカ・スウィフトに初めて出会ったのは、彼女のメジャー・デビュー直後の2019年のデトロイト・ジャズ・フェスティヴァルだった。祖母から譲られたと語るミント・グリーンの素敵なコートを羽織り、ヴェロニカのデビュー・アルバム『Confessions』でも好サポートをしていた同世代のホープ、エメット・コーエンのトリオを従えた、ジャズ・ヴォーカルの王道をいく堂々としたステージだった。

Veronica Swift - "A Little Taste" (Official Audio)

 そのパフォーマンスに魅了されて、彼女のバックグランドをチェックしてみた。1994年にジャズ・ピアニストのホッド・オブライエンと、シンガーで教育者としても評価が高いステファニー・ナカシアンの娘に生まれ、11歳でデビュー・アルバムをリリースし、天才少女ジャズ・シンガーの名を欲しいままにしていたことを知った。2015年にジャズの名門マイアミ大に在学中のヴェロニカは、若手ジャズ・アーティストの登竜門であるセロニアス・モンク・コンペティションにエントリーし、2位に輝く。翌年の大学卒業後、拠点をニューヨークに移し、クリス・ボッティ、ベニー・グリーンのグループに参加、ウィントン・マルサリス率いるジャズ・アット・リンカーン・センター・オーケストラとツアーを巡った。そして2019年に前述のアルバムで、マック・アヴェニュー・レコードからメジャー・デビューを飾る。2021年にヴェロニカは、性差別、人種差別、家庭内暴力、フェイク・ニュースといった社会問題をテーマに取り上げたセカンド・アルバム『This Bitter Earth』で、再びエメット・コーエンとコラボレーションし、アーティストとしてのさらなる成長を見せた。

Veronica Swift - I Am What I Am (Official Audio)

 2023年夏、ヴェロニカの初のセルフ・タイトルのサード・アルバムのファイルが届く。ストレートアヘッドなジャズだけでなく、ファンク、クラシック、ハード・ロック、ジプシー・ミュージック、ボサノヴァと、ヴェロニカ自身が「トランス・ジャンル」と語る、あらゆる音楽のエッセンスが盛り込まれた、それまでの路線から大きくシフトした作品だった。リリースを前に、日本盤のライナー・ノート執筆のためにヴェロニカに、インタビューを試みた。Zoomの画面に登場したヴェロニカは、ジャズのプリンセスの面影はなく、パンキッシュなメイクとファッションでキメていた。
「デビュー以来、父母がジャズ・ミュージシャンという生まれから、常にジャズを歌うことを周りから期待されてきたの。もちろんジャズは大好きだし私の重要な一部だけど、大学時代は、大好きなクイーン、ジャニス・ジョプリンやファンク・ミュージックもプレイしていた。でも、大学を卒業して本格的なプロ活動を始めてからも、ジャズをメインにプレイすることになった。もちろん素晴らしい体験だったけど、パンデミックですべてが停止した時に誕生日を迎えて、私はこのままでいいのかと悩み、自分の本当にやりたいことを追求することにした。そして2021年にバンドを解散し、マネージメント会社も変え、大学卒業以来過ごしていたニューヨークも離れ、ロサンゼルスに拠点を移したわ。そして再スタートをきったのよ」と、ヴェロニカはプロ・デビュー以来の葛藤とパンデミック下での新たな決意を語ってくれた。

Veronica Swift, Ingrid Jensen: "Sing" | International Jazz Day

「前作『This Bitter Earth』のエンディングに、12歳の頃から大ファンだったパンク・デュオ、ドレスデン・ドールズの「Sing」をカヴァーしたの。それをドールズのドラマーでプロデューサーのブライアン・ヴィグリオーネに送ったら、「素晴らしい、ぜひ会って話がしたい」と連絡があり、ロサンゼルスについてすぐに会った。ブライアンは、ロックをベースにしながらジャズにも造詣が深く、ジャズのバックグランドを持ちながらフレディ・マーキュリーやジャニスを愛する私と、すぐに意気投合してコラボレーションを始めた。ブライアンは、私がさまざまなアイディアを出すと、フォーカスを絞ってくれて、一つにまとめて完成させてくれる素晴らしいプロデューサーであり、卓越したプレイヤーで、彼の助けがあって、ニュー・アルバムは完成したわ」。
 昨年9月のデトロイト・ジャズ・フェスティヴァルで、ヴェロニカと再会した。お揃いのコスチュームに身を包んだバンドと共に、ポップ・スターのようにド派手なステージで、野外ステージの大観衆を圧倒していた。
「日本には、クリス・ボッティのグループで訪れたことがあるわ。また2016年に父が亡くなる少し前に、家族で日本を訪れたのも、大切な思い出よ。日本を再び訪れることを楽しみにしています」。今回のコットン・クラブでのギグには、昨年からのツアーを共にしているオールマイティなギタリスト、ゲイリー・ジョセフ・ポッター・Jrと、ヴェロニカを新たな世界へ導いたプロデューサー/ドラマーのブライアン・ヴィグリオーネを帯同している。ヴェロニカ・スウィフトの何が飛び出すかわからないスリリングなトランス・ジャンル・サウンドと、華やかで自由奔放なステージ・パフォーマンスに期待が高まる。

LIVE INFORMATION

VERONICA SWIFT

VERONICA SWIFT
ヴェロニカ・スウィフト
https://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/veronica-swift/

2024 4.27 sat., 4.28 sun., 4.29 mon.
[1st.show] open 3:00pm / start 4:00pm
[2nd.show] open 5:30pm / start 6:30pm

MEMBER
Veronica Swift (vo)
Carey Frank (p,key)
Gary Joseph Potter Jr. (g)
Max Gerl (b)
Brian Viglione (ds)

常盤武彦(ときわ・たけひこ)
写真家/音楽ジャーナリスト。1988年に渡米し、ニューヨークを拠点に日米のレーベルや、音楽誌、一般誌に、ジャズを中心に撮影、寄稿する。 2017年4月に東京に拠点を移す。3冊の著書があり、現在もデトロイト・ジャズ・フェスティヴァルのオフィシャル・フォトグラファー、日本のフェスティヴァルとの交流事業コーディネーターとして、毎年9月に渡米し、現地情報をアップデートしている。
  • 2024 4.27 sat., 4.28 sun., 4.29 mon.
  • VERONICA SWIFT
    ヴェロニカ・スウィフト
  • [1st.show] open 3:00pm / start 4:00pm
    [2nd.show] open 5:30pm / start 6:30pm